投稿BL小説
■甘すぎた果実■第01話 byアキ君
「幸介ってさ、今が食べ頃だと思うんだよな」
「……にーちゃん、何言ってるわけ?」
突然、わけのわからないことを言いだすのでいささか戸惑う。
「大人でもなく、子供でもなく。そういう青い年頃ってとても大切な時期だと思うわけよ」
祐司にーちゃんはソファに腰かけたまま宙をぼんやりと見つめている。
その顔は妙ににやにやしていて正直きしょい。
「にーちゃん。顔がとんでもないことになってるから」
俺はとりあえず言ってみるが……
「だから、俺はこれから毎日、お前の写真を撮っていこうかと思う!」
聞いちゃいねぇ。
俺はとりあえず無視して夕食の後かたづけをするためにキッチンへ行こうとする。
が、そのとき俺は急に腕を掴まれ。
「ん…ふ……」
口の中に舌を入れられた。
「い……」
嫌だ。やめろ。
そう言いたかったが口を塞がれていて何も言えなかった。
にーちゃんは右手で俺の腕を掴み、左手で俺の頭を撫でる。
「や…やめろっつーの! 何をいきなり……!」
十秒ほど経っただろうか。
ようやく解放された俺は急な出来事に混乱しながらも抗議したが。
「…幸介は俺のこと好きだと思ってたけどなぁ。俺のこと嫌いなのかなぁ。…ちゅーされて怒るんだったらやっぱり俺のこと嫌いなのかなぁ」
「……くっ! 俺より十歳以上年上のくせしてスネやがって……! むかつく、コイツ!」
毎回、こうやって主導権を握られる。
いいかげんどうにかしたいがどうにもならないところがかなしかったりする。
そもそも、今の俺はにーちゃんに養われている身だったりする。
父親が仕事の都合で単身赴任…となるところに母親もついていってしまい、今はにーちゃんと二人暮らし。
両親から生活費はもらっているはずなので厳密に言うと『養われている』というのも違うはず…なのだがなんだか肩身が狭い思いをすることもしばしば。
なんだか理不尽な立場な気がする。
「幸介……俺のこと嫌いか?」
上目遣いで尋ねてくる。
……ちなみに俺の身長は164センチ。
まだまだ成長期な中学2年生。
にーちゃんは176センチ。
成長しきった25歳。
わざわざしゃがみこんで上目遣いをするのはやめてほしい。
鬱陶しいから。
「……好きだけど」
「え? 聞こえなかったからもう一回」
「……好きだけど」
「もう一回!」
「黙れ!」
何で俺はこんな奴を好きになったんだろう。
理屈じゃないところがむかつく。
「じゃ、幸介。顔を真っ赤にして俺への愛を告白したところでさっそく記念撮影といこうか」
「顔が真っ赤なのはたぶんにーちゃんがむかつくことするからだと思うけど……記念撮影?」
にーちゃんはどこからかデジカメを持ってきて。
「さぁ、学ランに着替えたまえ」
なんだか馬鹿なことを言う。
……馬鹿なのはいつもか。
「いや、夜だし……」
学生服というものは学校に行くときに着るものだから夜に着るのはおかしい。
常識が無さそうに見える祐司にーちゃんも社会人なわけだし、それくらいわかってるだろう。
「……はぁ」
にーちゃんは溜息をつき、あからさまに肩を落としてみせる。
……絶対に俺に見せつけるためだ。
「幸介は俺の頼みを聞いてくれないような薄情な奴だったんだな」
「え? 何、その解釈の飛び方!? にーちゃんがおかしいんであって、俺が薄情とかそういう問題じゃないっしょ?」
「俺はな……弟が欲しかったんだ。弟が出来て本当に嬉しかった……幸介みたいな弟が出来て俺は心の底から嬉しい」
「………」
俺とにーちゃんは義理の兄弟だ。
両親はお互いに再婚同士。
俺とにーちゃんはある日突然兄弟になった。
けど、なんだかんだで仲良くやってきて、今では兄弟以上の関係になっている。
「俺は…幸介に出会うことが出来て本当に嬉しいよ。……大好きだ」
そう言って。
にーちゃんは俺を抱きしめた。
……にーちゃんが突然そんなことを言うから、俺はどうしたらいいのかわかんなくって。
「俺も…にーちゃんのこと……すき」
いつのまにかそんな言葉が口から飛び出していて……にーちゃんの温もりのなかに包まれていた。
「…幸介」
「……ん?」
「と、いうわけで俺はお前のことが大好きで、お前も俺のことが好き。確認しあったところで学ランを」
「わけわかんねーって!! お前、馬鹿だろ!!」
せっかくいいかんじだったのに、急ににーちゃんは大真面目な顔で妙な要求をしてきたものだから、俺はにーちゃんを突き飛ばす。
「にーちゃんは俺に何をさせたいわけ!?」
「中学時代の記念写真を撮っておこうと思ってな〜。幸介はまだ成長期だからこれからもっと身長も伸びるだろうし。今は『今』しかないわけだぞ? 記録しておきたいじゃないか」
へらへらとにーちゃんはさも当然といったふうに言う。
「……にーちゃん、学ランフェチだったり?」
「……まぁ幸介の学ランを見て、興奮してたりしないわけでもない」
「なんかもう聞くんじゃなかったー!!」
「あたまを抱え込んで床に座り込む奴をはじめて見た気がするな」
俺がなんだかやりきれない気持ちになっていると。
「なんなら学ランでしてみるか? 結構いい刺激になるかもしれないぞ?」
「嫌だ! 嫌だ! 俺はそーいうところへは行きたくない!」
「学生服フェチというのは結構多いんだがな」
「何? その『俺はいたって普通』みたいな顔? 弟に無理矢理学ラン着せてしようとしてる奴がする顔じゃねーよ!」
「はっはっは」
「変な笑い方すんじゃねーよ! なかなかそんな笑い方する奴いねーよ!」
「さ、ベットに行くか」
「話を進めるな!」
「……ここでするか?」
「…い、嫌だよ! んな気分じゃねーし……」
「そうだ! どうせならハメど……」
「なんだよこいつぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
俺とにーちゃんの毎日は大抵こんなかんじだったりする。
疲れるけど・・・・・幸せだったりもする。
……ぜってー、にーちゃんには言わないけど。